「さすがだな、公瑾!!」
弓矢で舞姫を撃破した周瑜に、孫策が駆け寄った。
しかし、孫策が声を掛けても、周瑜は手で両目を覆い、俯いたままだ。
いつもなら、弓兵なのだから、舞姫を狙うのは当然だとか言いながら、嬉しそうに微笑んでくれるのに。
「おい、どーしたんだよ!?」
「なんでもない、大丈夫だから。」
返ってきた声音は冷静なもので、一瞬だまされそうになる。
だが、お前が自分から”大丈夫”って言葉を出す時は
”大丈夫”じゃないんだって知ってたか?
心配で覗き込んだ周瑜の頬に、伝う涙を見た気がして、強引に手を掴み、顔を上げさせていた。
「公瑾!!何があった!!」
まさか、流れ矢でも受けたのか!?
いや、敵には弓兵はいないはずだ。
それに、敵の攻撃を受けたくらいで公瑾がこんな・・・
真っ赤になった目からボロボロと涙を零しているなんて、絶対に非常事態だ!!
慌てる孫策の目の前で、涙に濡れたままの周瑜に苦笑が浮かんだ。
「伯符、本当に大したことないんだ。そんなに、心配しないでくれ。」
「お前が、戦場で涙を見せるなんて、それだけで大したことだろう?」
「・・・・・・野火の・・煙が目に沁みただけだから。」
少し恥かしそうに告げた周瑜を、孫策は信じられない思いで見つめていた。
だって、お前・・・自ら大火を放ちまくってるのに、今更野火に!?
「火計は、風向きを読んだ上で放っているんだ。だから・・・」
孫策の戸惑いを読んだような周瑜の言い訳に、孫策はやっと安堵の表情を浮かべた。
「痛いんなら、目を閉じていろよ。」
「戦場で、そんな無防備なこと・・・・」
「俺が居るんだから大丈夫だろ?それとも、一度帰城するか?」
「・・・・・5秒だけ時間をくれ。」
そう言って、素直に?目を閉じた周瑜の頬に伝う涙を拭うように、
孫策はそっと、唇を寄せた。
周瑜様に孫策の前で涙を流させて見たくて、色々状況を想像してみたのですが、
コトの最中ぐらいしか思い浮かばなかったので、
結構、強引な設定にしてしまいました(笑)