昨日、孫堅から呉の全武将にお達しがあった。

今日は”はろうぃん”という西の国のお祭りらしい。

仮装した子供が大人に”お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃうぞ”と可愛く強請って家々を回る行事という。

だから、今日は全員仮装して、孫堅にお菓子を貰い来るようにとのことだった。




「公瑾、仮装の準備はできたのか?」

「いや、まだ・・・・・・」

「そんなことだろうと思って、お前の分も準備しといたぜ。」

そう言って孫策が周瑜に渡したのは、黒い猫耳と尻尾だった。

孫策自身はすでに、銀色の毛並みの犬耳らしきものと、フサフサの尻尾を身につけている。

「確か仮装は、妖怪やお化けに扮するのでは?」

「ああ、だから黒猫と狼男だ。」

・・・・・・・・・・・・・

黙って耳と尻尾を見つめている周瑜は、乗り気ではなさそうだ。

「嫌なのか?手が込んだ仮装はお前が嫌がると思って、簡単なものを用意したんだぜ?」

「・・・・・・まにあっく過ぎないか?」

「そうか?絶対に似合うと思うけどなぁ〜」

取り合えず試しに付けてみろよと、孫策は周瑜に耳と尻尾を装着させてしまう。

黒髪から覗く、ピンと立った毛並みの良い耳が、スリムな曲線が誘うように揺れる尻尾がとても似合っている。

「うん。すっげぇ〜可愛いぜv」

「はぁ〜。この姿を人前に晒すと思うと気が重い。行かなきゃ駄目なのか?」

「行かないと確実に拗ねるな。まあ、一月は天啓の範囲に入れてもらえないんじゃねぇか?」

「・・・・それは困る。」

「だろ?ほら、さっさと行こうぜ。」

往生際が悪く、一向に動こうとしない周瑜に、孫策が手を差し伸べる。

だが、孫策の手を取る代わりに、周瑜は自分の掌を見せるような仕草をした。

「伯符、お手。」

「あのな・・・犬じゃなくて狼なんだけど。」

完全に八つ当たりである周瑜の行動に、孫策は仕方の無い奴だと苦笑を浮かべると、

軽く丸めた手を周瑜の掌にのせ、

「ワン。」

と吠えて見せた。

若干、緩んだ周瑜の表情に、孫策は逆の手に代えると、もう一度、ワンと吠えてやる。

ふふっ、と周瑜から笑みが零れた。

「じゃあ、公瑾もなんか猫っぽいことやってくれよ。」

機嫌を直した周瑜に今度は孫策がリクエストする。

周瑜は、孫策の拳をペロリと舐めると、

「・・・・・・・・にゃあ。」

と小さく鳴いた。

予想以上に愛らしい仕草に、心臓を鷲掴みにされる。

こりゃすっげぇ〜、だけど・・・・

「公瑾!!今の、絶対他の奴の前でやるなよ!!」

「するわけないだろう。」

ふいっと顔を背けると、周瑜は孫策を置いて歩き出してしまう。

その仕草に、やっぱ、公瑾って猫っぽいよなぁ〜と己の見立て良さを再確認する。

ゆらゆらと周瑜の尻で揺れる尻尾の動きに誘われるように、孫策も周瑜を追って一歩踏み出した。

だが、スタスタと先に歩いていた周瑜の足が次第にゆっくりになる。

何かと当たりを見渡すと、遠くに人影が見えた。

一人でいることが、恥かしくなって来たのだろう。

追いつき、周瑜の手を取るとニッと笑みを浮かべた。

「俺を置いてくなよ。一緒に行こうぜ。」


そして、返事の変わりに、孫策の手がギュッと握り返された。







ちょっと、ツンデレ風味(若干古い?)な周瑜様。
異国の行事の日になると、パパが活躍してくれるのです。
仮装はパパや知力6以下はきっとノリノリ、知力7以上は若干引き気味だと思われます。







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