孫策は、風に乗って聞こえてきた笛の音に足を止めた。
楽への造詣は深くはないが、この音だけは昔から聞き分けることができる。
この音色は、奏でる人物のように俺を魅了して止まない。
笛の音に誘導されるように、孫策は庭の奥へと歩き出した。
たどり着いたのは、一本の木で、色ずく紅葉に覆われた枝を懸命に広げている。
そして、目的の人物は紅葉の中に溶け込むように、低めの枝に腰掛けて笛を奏でていた。
少し離れた場所から、その姿と音色を堪能する。
心地よい音を妨げるのはもったいなくて、声も掛けずに佇んでいた。
だが、すぐに気配を察した周瑜の視線が孫策を捕らえた。
気付いたのならばと、ゆっくりと歩み寄る。
手を伸ばせば届く距離まで近づくと、ふと笛の音が止んだ。
「伯符?どうした?」
「お前の音に誘われた。だから、続けろよ。」
「ならば、伯符のために。」
再び、周瑜が笛を奏ではじめる。
紅く色ずく紅葉も、笛の音も美しい。
それらが、周瑜を引き立てて、息を飲むほどに美しい光景だった。
風にザワザワと揺れる枝が一瞬、周瑜の姿を覆い隠した。
紅葉に周瑜を攫われてしまいそうな気がして、咄嗟に周瑜の腕を掴む。
「あっ・・・・」
体勢を崩した周瑜の唇に触れるだけの接吻をした。
「危ないじゃないか。」
「悪い。お前が、樹に攫われそうな気がしたんだ。」
孫策は存在を確かめるように、指で周瑜の唇をなぞった。
「それで、不安は解けたのか?」
「いや、まだ足りない。」
「ならば、何度でも確かめればいい。」
誘うように囁くと、周瑜はゆっくりと目を閉じた。
10月の配信画像の、紅葉で妄想しちゃいましたv