「こぉーきーん!!化粧してくれ!!」

「な、なんだって??」

朝から、騒々しい足音を立ててやってきた孫策の頼みごとに、周瑜は耳を疑った。

しかし、振り返った先にいた孫策は、その手に華やかな女物の衣装を携えている。

どうやら、聞き間違えではなかったらしい。

「伯符に女装趣味があったとは・・・意外だな」

「んなわけねぇーだろ、これはだなぁ・・・・」



どうやら孫堅様がまた、どこぞから不思議な祭りの情報を仕入れてきたらしい。

節分に、男が女、女が男に化けたり、子供が大人、大人が子供に化けたりと普段の姿と異なることで、

災厄を回避できるという。

縁起を担ぐためというのは悪くはないが、孫策が完全に乗り気なのが少々腑に落ちない。

それに、女装のための化粧をわざわざ私に頼みに来る必要があったのか?

孫堅様の悪乗りなら、呉夫人や尚香様あたりが手ぐすね引いてそうなのに。



「公瑾?だめか?」

しばらく考え込んでいたら、孫策が焦れたように覗き込んでくる。

「駄目ではないが、女性に頼んだ方がいいんじゃないか?」

「お前が良いんだよ。化粧、得意だろ?」

「できなくは・・ないが・・・」

「だろ?じゃあ、頼むぜ!!」

孫策は、ずかずかと部屋に入り込むと、持っていた衣装を無造作に投げ出し、どかりと座り込む。

「しかたがないな・・・」

周瑜は孫策に聞こえないように溜息をつくと、放り出された衣装を軽くたたみ、化粧道具を引き寄せた。





顔全体に白粉を塗り、眉を整えるあいだ、孫策は目を閉じろといえば素直に目を閉じ、周瑜の手に従って顔の角度を変える。

なんだか、されるがままになっている孫策は新鮮だ。

目の上に色を入れようとしたとき、ふと悪戯心が湧いた。

「目を閉じて」

孫策に顔を近づけ、耳元に唇を寄せると、そっと囁いた。

孫策の右目の上に指を滑らせたあと、ふわりと孫策の唇に口付けを落とす。

反射的に開いた孫策の目を見つめて、微笑む。

「伯符?どうした?」

「おまえ・・・」

「左側がまだなんだ、もう一度、目を閉じて」

何事もなかったかのように告げると、孫策は再び目を閉じた。

今度は、孫策の肩に手を置くと、ゆっくりと口付ける。

間髪を置かずに孫策の手が周瑜の腰を引き寄せた。

引き寄せられるまま、孫策の膝の上に跨る。

「あっ・・・」

吐息を漏らし、誘うように唇を開くと、孫策の口付けが深くなる。

「んっ・・・・伯符、化粧は・・・いいのか?」

「後でいい」

周瑜から仕掛けた口付けだったはずなのに、いつの間にか孫策に主導権を奪われている。

慣れ親しんだ孫策との口付けと、鼻先で香る白粉の匂い。

その、僅かな違和感が、戸惑いよりも興奮を呼ぶ。



化粧の続きは、ずいぶんと後になりそうであった。









1年半ぶり?? な、策瑜妄想です。
節分のお化けネタ、なぜか孫権と周泰で妄想が始まったのですが、
やっぱり、再開1発目は策瑜だろう!!ってことでw







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