「僭越至極」
孫堅は、やっと手に入れた戦器に、昂る心を抑えるように冷静に装備した。
黄金に輝く宝物に希望の光を見ている気がする。
ああ、これで俺はお前達に充分な力を発揮させてやれるのだ。
そのことが、とても嬉しかった。
「お前達、今まで苦労を掛けたな。」
背後に控える武将達を振り返ると、小柄な青い塊が勢い良く飛び込んできた。
軽い衝撃と共に、腰にギュッと抱きつかれる。
「文台さまぁ〜。おめでとうございますv」
無邪気に摺り寄せられる頭に手を伸ばすと、満面の笑みを湛えた朱治と目が合った。
青い大きな瞳には、ただ俺だけが映っている。
俺を慕ってくれる存在が、彼等が愛しい・・・・
その瞳に微笑みを返すと、クシャと髪を撫でた。
「ありがとう。お前達がいたから、効果時間短縮にも負けずココまでやってこれた。
君理・・・・これからも、お前の計略を・・・・」
頼りにしているぞと続くはずだった、孫堅の唇に朱治の指が言葉を塞ぐように触れた。
「計略がお役に立っているのは嬉しいですが・・・・一つ我儘を言わせてください。」
「なんだ?」
「私も殿の計略の範囲に入れてください!!私も殿の幻を共に見たいのです。」
「ああ、わかった。機会があればお前も共に。」
クシャクシャともう一度髪を撫で、視線を朱治から3老将達へと移した孫堅は驚きに目を瞠った。
孫堅を見つめる6つの目からボロボロと涙が伝い落ちている。
程普と黄蓋はもう年だから涙脆くなっているのだろうが・・・韓当まで!?
「お、お前達・・・・泣くほどのことではないだろう?」
「いえ、念願の殿の戦器を手に入れることができ、嬉しいのです!」
「ああ、殿の輝きが更に増したようで、眩し過ぎて目が眩みます。」
「効果時間の増した殿の幻に共に身を捧げることができるのが、至上の喜びにございます。」
「「「この喜びに、心が昂って涙腺が制御できませぬ!!」」」
孫堅は腰に纏わり付いたままだった、朱治の腕をやんわり外すと、3老将へと歩み寄った。
少し反応が過剰な気がするが、俺を思う故のことならば、悪くはない。
いい年をしたオヤジ達が揃って涙する姿は美しくはない。
だが、そんな彼等の姿を愛しく感じてしまう。
まずは韓当の肩にそっと触れると、泣くなと言う代わりに、涙を拭うように頬に口付けた。
「と、殿!?」
驚きに涙が止まった韓当に微笑むと今度は、程普と黄蓋に手を伸ばした。
2人の頭を肩に押し付けるようにして、ギュッと抱きしめる。
「これからも、変わらず俺について来い。お前達に夢を見せてやろう。」
「ううっ・・・殿ぉ〜〜」
「ずっと、お側に・・・・・」
そして、すぐには泣き止む気配のない2人の涙が枯れるまで、孫堅は気長に付き合っていたという。
感涙で頬を濡らす程普のつもりが、感涙で頬を濡らす3老将になってしまいました。
うをっ、全くもって、美しくない光景ですね〜
周瑜様とかが、ポロポロと涙を零していらっしゃったら、とても美しくて絵になるのに。
本当は、3老将を一変に抱きしめてあげたかったのですが、物理的に無理そうなので、せめて2人に・・
奴等、ガタイがいいから2人でもいっぱいいっぱいそうですが。
もし、パパの上級戦器を勝ち取れてしまった暁にはどうなることやら(笑)