呉軍は突如、船ごと紫色の邪悪なオーラに包まれ、吸いこまれるように、魔王・遠呂智の君臨する異世界へと飛ばされた。
飛ばされた先は、見渡す限りに荒廃した大地が広がっており、正面には青灰色の軍団が待ち構えていた。
状況を把握する間もなく、大量の火矢が降り注いだ。
次々に船に火が付き、呉軍は混乱をきたした。
燃え上がる船から逃げまどう兵士達に、青灰色の軍団が一斉に襲いかかった。
孫堅が、混乱する自軍を何とか纏めて、船の後方に退いた時には、兵力は半分近くにまで減ってしまっていた。
主な武将の中では、周泰とショウキン、そして孫権の姿が未だ見えない。
燃え盛る船の勢いの激しさに、青灰色の軍団の追撃は今は止んでいる。
しかし、攻撃が再開されるは時間の問題だろう。
ここは何処で、青灰色の軍団は何者で、何が目的なのか?
把握できる状況があまりも少なすぎて、いつもなら打てば響くような答えが返ってくる若き軍師達からも
決定打となるような答申はない。
「誰か、策はあるか?」
孫堅は始めにそう聞いたきり、黙って各々が述べる意見を聞いている。
しかし、迎え撃つには兵力差が大きく、逃げるにも地の利はなく、敵の目的も分からず、降伏という選択肢があるのかすら不明。
そんな状況では、意見が纏まる訳もなく、泥沼の様相を呈してきた時、今まで黙っていた程普が口を開いた。
「どのような状況になろうとも、ワシは殿に付いて参ります。それだけは揺るぎません。」
そして、程普に全員が同意する流れで、全ての判断が孫堅に委ねられた。
「船が燃え尽きるまでに体勢を立て直し、こちらから撃って出る!!」
孫堅がそう決定を下すと、異論を挟む者ははいなかった。
再び軍師達に意見を求め、伏兵を燃えた船の間に潜ませ、敵の背後を突く。
その混乱に乗じて、敵の大将を打ち取るという周瑜の案を採用した。
伏兵として陸遜・甘寧・凌統を送り出し、孫策・周瑜・太史慈・呂蒙が先鋒を務めることになった。
今は、全軍が慌ただしく準備をしている。
指針さえ示してしまえば、孫堅自身には意外とやることがなく、その様子を眺めていた。
腕を組み、悠然と佇む孫堅の姿からは、不安など微塵も感じられない。
しかし、それは表面上だけで、心の内では次々と浮かんでくる不安と闘っていた。
未だ戻らぬ、孫権達はどうしているのだろうか?
敵に捕縛されたか・・・まさか、討たれたのではあるまいか?
燃え上がる船の上で最後に見た、孫権の後ろ姿。
周泰に護られるようにして、船から退いていくところだったと思う。
孫権の護衛に関して、絶対の信頼を置ける周泰が一緒ならば、きっと無事に違いない。
そう言い聞かせ、今度は視線を孫策へと転じた。
ああ、こちらも、見納めになってしまうかもしれない。
この策は、敵の大将が武勇に秀でていれば、成功は難しくなる。
もし、敵の大将を打ち取るまでに時間を要すれば、圧倒的多数な敵兵達に押し包まれてしまうだろう。
そうなれば、もう打てる手は少なく、ジリジリと追いつめられいくことになろう。
戦の勝敗は8割方、実際に戦闘が開始する前に決まる。
だからこそ、情勢を見極め、勝てる状況を作り出して、孫呉を勝利へと導いていく。
それが、俺のやるべきこと。
しかし、今は正確な状況が掴めず、明確な勝利への道が見えていない。
勝てる可能性が少ないかもしれない戦いに、今から皆を導いていく。
そのことが苦しい。
でも、士気が下がってしまうと、その少ない可能性まで潰えてしまうから、俺達は勝てると強気な態度は崩せない。
どんな状況に陥ろうとも、俺に付いて来ると言ってくれる者たちが居る。
だがら、どんな時でもその者達の支えとなる、存在であろうと思う。
そんなことを考えていた時、背後から声をかける者があった。
「殿・・・」
声に振りかえると、そこには程普がいた。
「ああ、お前か。」
何か用か?と促すように視線を向けたが、程普はなんでもないと首を横に振る。
何も言わずにそっと孫堅の二の腕に触れると、孫堅の背後に佇む。
しばらくの間、孫堅は側に感じる程普の存在と、腕に触れた手の感触だけを感じていた。
揺れていた心が多少落ち着きを取り戻す。
「程普、もう大丈夫だ。」
孫堅がそう囁くと、程普の手が腕から離れて行った。
「我らは例え追いつめられても、殿という支えがある故、立ち上がることができるのです。」
「分かっている。」
「ですが、殿に支えが必要な時は、ワシが必ず側におります。」
「ああ・・・覚えておこう。」
孫堅は程普の言葉に頷くと、騎乗して軍の中央へと向かう。
自軍の準備は整い、船の炎もずいぶん小さくなってきた。
前方から、敵の進軍の足音が聞こえてくる。
迫りくる敵軍の気配を全軍が感じ取り始めたとき、騎馬が一騎でこちらに向かってくるのが見えた。
それは、孫権を伴った周泰だった。
手綱を握っている周泰は、所々に手傷を負っているようだが、孫権に目立つ怪我は見当たらない。
「父上!!遅くなりました!!」
「権!!周泰!!無事か?」
「はい。ですが、敵に包囲されそうになり、私を逃がすためにショウキンが囮に・・・」
肩を落とした孫権が、悔しそうに告げる。
「かすり傷です。敵の勢い凄まじく・・・逃げるのが精一杯にて・・・。」
周泰の声からも疲労が滲み出ていた。
「2人ともよくぞ。戻った。」
労うように、2人の肩をポンと叩く。
しかし、今はゆっくりと休ませてやる猶予はない。
すでに敵軍が見える位置まで迫ってきている。
「今から総攻撃をかける。権には後方を任せる。周泰。権を頼んだぞ。」
「はい。」
「承知。」
配置につく孫権と周泰を見送ると、孫堅は敵影を正面から見据えた。
先ほど程普が触れた箇所を手で掴み、しばし目を閉じる。
そして、ゆっくりと目をあけると、剣を抜き全軍に告げた。
「皆の者、行くぞ!!勝機は、我らにあり!!」
「「「「うおぉおおおおおおー!!」」」」
孫堅の号令に呼応し、鬨の声が上がる。
呉軍の士気は上々で、その声を聞いていると本当に勝機が見えてきそうな気がした。
つづきへ
今さらながら、無双オロチをプレイしました。
それで、これは絶対に遠呂智×孫堅だぁ〜v
これだけ美味しい設定ならば、無双サイトさまにごろごろ転がっているに違いない!!
と思って探しに行ったのですが、意外と少なくて・・・・・
っで、結論として、足りないんなら自給自足よvっと手を付けてみました。
自分でやるなら、やっぱり程普×孫堅前提でやりたいなぁ〜
無双の程普はモブキャラだけど・・・そんなの関係ないわ!!だって、好きなんだものw
と言っても、呉軍で一回プレイしただけなので、ストーリと辻褄が合わない所とがあっても
気にせずスルー、もしくは優しく指摘してやってください。