朱治は己の戦器である、名刀「安国」を抱え、ニコニコと笑みを浮かべていた。

今日は、上級戦器争奪戦に見事勝利し戦器のレベルUPに成功したのだ。

「槍兵防御UP」が付加されたらしい。

今のところ効果の実感はないに等しいが、嬉しくてたまらない。

この喜びを伝えたくて、キョロキョロと辺りを見渡すと、廊下を歩いてくる孫堅を見つけた。

盛り上がる感情のままの勢いで、孫堅へと駆け寄った。


「文台さまぁ〜、見てください!!」

私の駆け寄る勢いに少し驚いた表情を浮かべる文台様が可愛らしくて、ちょっと得した気分になる。

だが、直ぐに暖かな笑みが浮かんだ。

「上級戦器か?以前より輝きが増したようだな。」

「はい。槍兵防御力が上がりました!!」

「そうか。では、横弓だけでなく城内乱戦でも頼りになるな。」

「お任せください。今まで以上に文台様のお役にたって見せます。」

ああ、文台さまが私を頼ってくださっている。これほど嬉しいことはない。

精一杯凛々しい表情を浮かべて言い切ると、ポフっと頭を撫でられた。

子供に対するような触れ合いでも、相手が文台様ならば胸が高鳴る。

「君理。お前は、本当に強くなったな。」

だが、続いて感慨深く呟かれたお言葉に、心臓が破れるかと思うほどの動悸に襲われた。

「この戦器、お前自身の端攻城でもぎ取ったものだ。それに、一騎討ちでは、SR魏延を討ち取っていた。」

「運が良かっただけにございます。」

「日頃の鍛錬の成果だな。」

「稽古に付き合ってくださったおかげです。」

「それだけではない。一人、部屋でも麻袋を抱えて鍛錬をしていただろう?」


”麻袋を抱えての鍛錬”という言葉が孫堅の口から出た瞬間、朱治の顔が凍りついた。

〜〜〜〜朱治には野望があった。

いつか孫堅をお姫様抱っこしてみたい!!という野望だ。

その野望を実現するため、孫堅の目方に合わせた麻袋に孫堅の似顔絵を貼り付け、自室でこっそり鍛錬を積んでいたのだった。

(朱治シリーズ「朱治の壮大なる野望1」参照)〜〜〜〜〜

まさか、今まで秘めていた野望も欲望も全て文台様はご存知だったのだろうか?

分不相応な望みだと分かってはいる。だが、ご存知の上で黙認してくださっていたのは、何故か?

己の恥かしい姿を知られていたという羞恥心と共に、僅かな期待が頭をもたげた。

その期待に縋るように、文台様を見上げた。

「・・・・申し訳ございません。ご不快でしょうか?」

「不快なものか。お前のその努力を愛しく思うぞ。」

そう言って、浮かべられた文台様の微笑みに眩暈が襲う。

ああっ、こんな夢のような展開があっても良いのだろうか?

私の努力を愛しいと言ってくださるということは、

文台様も私を愛しいと思ってくださっているということで、

文台様も・・・私に・・・・愛されたいと思ってくださっているのですね!

私は明日、この世から消えても良いぐらい幸せです。

文台様・・・・今、朱君理は漢になります!!


「文台様、失礼します。」

「うわぁっ、君理っ!何を・・・!?」

素早く文台様の背と膝裏に腕を回すと、フンガァ〜と気合を入れて抱き上げた。

だが、体格差から抱き上げるだけでも限界が近い。

驚きに身を捩る文台様の動きが、情けないが腰にきて心が折れそうになる。

「お願い・・ですからっ、暴れ・・はぁ・・・ないでくださ・・・はぁはぁ・・・」

「馬鹿者。無茶をせずにさっさと下ろせ!!腰を痛めるぞ。」

「くっ・・・・う・・・私の腰を・・・心配してくださる・・・なら、大人しく掴まっていてください!!」

「・・・・・仕方のない奴め。」

首筋に回された文台様の腕にこの上ない喜びを感じながら、ヨタヨタと覚束ない足取りで近くの部屋になだれ込んだ。

最後の意地で文台様をそっと下ろすと、その場に倒れこんだ。

両手両膝を付いて喘ぐ私の腰に、そっと文台様の掌が触れた。

労るように撫でてくださる感触に、違う意味で息が荒くなってしまいそうだ。

「はぁ〜。お前はいったい何をしたいんだ?」

何を?そんなの決まっています。文台様をこの腕の中に閉じ込めてしまいたいのです!!

呼吸が整わず声にならない思いを瞳に込めて文台様を見つめた。

「君理?」

「はぁはぁ・・・・文台様・・・・」

どんな宝石よりも魅惑的な紫色の瞳に私が映っている。

その瞳に引き寄せられ、衝動を抑えることができなくなる。

「お慕い申し上げております。」

囁きとともに、そっと唇を重ねた。

「あっ・・・・」

驚きに開いた唇に舌を侵入させるが、抵抗なく受け入れられた。

「んんっ・・・文台様、愛しております。」

「君理・・・お前・・・・・」

だが、拒絶の色が見えないのを良いことに文台様を押し倒そうと身を乗り出した瞬間、グギッと腰に激痛が走った。

「っ・・・・・・うう・・・・」

崩れ落ちた体が文台様の腕に抱きとめられる。

腰の痛みに苛まれながらも、文台様の香りに包まれる幸福に浸ってしまう。

「無茶をするからだ馬鹿者。お前と戦場に立つのは、あと数ヶ月なのに、戦に響いたらどうする。」

「えっ!?待ってください!!私は排出停止ではありません!!今後も共に戦場にお連れください。」

「残念だが、俺と程普・黄蓋・韓当で6.5コスになる予定なんだ。お前を入れるとコストが合わない。」

そっ、そんなぁ〜〜。

突然の2軍落ち宣告で、幸福の絶頂から、絶望へと突き落とされた。

「ですが、先ほど私の努力を愛しく思ってくださっていると・・・」

「ああ。だから、コストは足りなくなってしまうが、たまにCOM戦には連れて行ってやるからな。」

文台様の”たまにCOM戦に”という言葉に嘘はないだろう。

今でも、祖茂を連れて、たまに7.5コスでCOM戦に挑まれている。

だが、私は”たまに”では嫌だ。常に文台様の側にありたい。

そのためには・・・・韓当を抹殺するか、1.5コスになるか2つに一つ!!

まだ、確定したわけではないのだから、望みはあるはずだ。

文台様、数ヵ月後を楽しみにしていてください。

必ずあなたに、私のことが必要だと言わせて見せます。

新たな決意を胸に秘め、朱治は腰の痛みを堪えて孫堅に再び腕を伸ばす。

誓いの意味を込めて、触れるだけの接吻を送った。

「文台様のためならば、私にできないことはございません。覚えておいてください。」

ニッコリと極上の笑顔を孫堅に向けると、朱治は少しぎこちない歩みで部屋を後にした。



その後、朱治の部屋から呪いのワラ人形が発見されたらしいとも

石像の欠片(FE暁の女神で体格がUPするアイテム)を探す旅に出る準備を進めているらしいともいう。








不覚にも、今回の朱治はあんまりキモくない気がする〜


麻袋トレーニング・・・さすがにパパは自分の似顔絵が貼られてたのには気付いてなかったと思う。
でも、今回の一件で、さすがにパパも朱治の望みに気付いただろうから、
いつか、朱治も報われる日が来てしまうかもしれません。

う〜ん。でも、朱治は、報われないのが楽しいなぁ〜とも思います。
万が一朱治が必死の努力で稼動時に、1.5コスになってたりしても、
逆にパパが2コスに戻っていたりして、結局2軍落ちとかになるぐらいが楽しい。










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