「文台さま!!あぶなぁ〜いぃ!!」
天下無双状態の呂布が兵力ミリの孫堅に迫る。
朱治は咄嗟に己の身も省みず、呂布の前に立ちはだかっていた。
文台さまが帰城されるまででいい。なんとしてでも、呂布を食い止めたかった。
だが、武力2の身でどれ程の時間稼ぎが出来るというのか・・・・
武力24の騎馬による突撃を覚悟した瞬間、朱治に起死回生の機会が訪れた。
”一騎打ち、発生!!”
「か弱き身で我の前に立ちはだかるとは愚かな。そんなに死にたいのか?
ならば、じっくりと切り刻んでやろう!!」
突撃&直後の乱戦で蒸発確定の朱治に、興が乗ったらしい呂布が一騎打ちを挑んでくれたのだ。
「本気で来なさい」
朱治は冷静な声音で、呂布の一騎打ちを受けて立つ。
圧倒的に不利な状況にも関わらず、スッと意識が冴え渡り、力が漲った。
文台さまを呂布の魔の手からお守りしたい!!
その一念が、朱治の細い体に力を与える。
朱治は怯むことなく、呂布へと突っ込んでいった。
ガキーン!!×5
朱治は呂布との打ち合いで全無双を叩き出し、見事呂布を撃破した。
ギッギッギッ・・・・
信じられない状況に呆然と撤退していく呂布を悠然と見送ると、朱治は背後に庇った孫堅を振り返った。
「あっ、文台さま!!」
ぐらりとよろめく身体を咄嗟に支える。
息も絶え絶えな孫堅の膝裏に腕を廻すとフンヌッと抱き上げた。
軽々ととはいかないが、日頃の鍛錬の成果でしっかりと歩を進めることができていた。
「君理・・・無茶をするな・・・降ろしてくれ」
弱弱しく抵抗する孫堅に、大丈夫ですからとニッコリと微笑んだ。
戸惑いに揺れる紫色の瞳をじっと見つめる。
「すまないな・・・」
小さな呟きと共に、首筋に腕が回された。
孫堅が朱治へとギュッと抱きつく。
首に掛かる吐息に眩暈がしそうだった。
城に帰り着くと、朱治はそっと孫堅の身体を寝台に降ろした。
「しばらく休んでいてください。私は戦場に戻ります。」
精一杯、漢前な笑顔を作って孫堅へと向けた。
だが、名残惜しくて、そっと頬を撫でていた手が、いつの間にか孫堅に掴まれていた。
「ぶ、文台さま!?」
「行くなよ。もう少し、側に居てくれ。」
「ですが・・・・・」
「リードも取っているし、お前がコス3を撃破したから、大丈夫だろう?」
お前に居て欲しいんだと、求める視線に魅せられる。
愛しい存在からの誘惑に、抗う術はなく、朱治は結局城内に留まることにした。
寝台の端に腰掛け、孫堅の髪を梳く。
心地の良い沈黙を堪能していた朱治の耳に、小さな声が聞こえた。
「お前は・・強くなったな・・・」
「いえ、文台さまをお守りしたいと、その一念だけにございます。」
「そうか・・・・・」
「はい。」
微笑みを浮かべた文台さまの表情が儚く見えて、ドキリとした。
私のためだけに向けられる、文台さまの表情。穏やかな二人きりの語らいの時。
外では戦闘が続いていることなど、忘れてしまいそうなぐらい幸せだ。
「そうだな・・・何か、欲しいものを考えておけ。この度の働きに対して褒美を取らせよう。」
「私が欲しいのは、文台さまだけです。」
「く、君理!?お前・・・・」
思わず本音を口走っていた。驚きに染まる文台さまのお顔も素敵だなぁ〜と堪能する。
「いいのか?そんなもので」
「私には、最高の褒美です。」
「ならば、存分に受け取れ。」
文台さまの唇が、今にも触れそうな距離で囁いた。
唇に感じる吐息が熱い。
ああ、文台さまが遂に私の腕の中に・・・・
長年の野望が、夢想が今、現実になる!!
ぱわぁあああ〜 おぶ らぁぁああああぶぅっ!!!
朱治が孫堅の唇に喰らいつこうとした瞬間、何故か身体がガクガクと揺さぶられる感覚に襲われた。
ハッと目を開くと心配そうに覗き込む文台さまと目が合った。
「大丈夫か?」
あれ?何故私が寝ているのだろう??
これでは、先ほどまでと位置が逆な気がする・・・・
「あの・・私は・・・」
「覚えていないのか?攻城準備中の夏候月姫と出会い頭の一騎打ちで撃破されたのだぞ。
どこか、打ち所が悪かったのかもしれん。もう少し安静にしていろ。」
ポンと頭を撫でられた。
・・・・・お、思い出した。私は終盤の大事な場面であっさりと同武力の女相手に不覚を・・・
では、あれは夢だったのか?
ああっ、どうせ夢ならば、文台さまを美味しく頂いた後に覚めてくれればいいものを!!
しかも、私が一騎打ちに敗北したことで、この戦に・・負け・・・・
「すみません。私のせいで・・・」
「気にするな。1コス同士の一騎打ちで戦況が逆転する程度の采配しか振るえなかった俺に責任がある。」
「・・・・・はい。」
慰めてくださっているはずなのに、私の一騎打ちなど頼りにしていないと言われているようで寂しかった。
こっ、こうなったら、いつか赤兎咆哮中の呂布との一騎打ちを制してみせる!!
文台さまへの愛にかけて!!
だが、朱治の勇猛なる理想が現実となる日はきっと来ない(笑)
朱治きゅんの理想と現実・・・
例え夢でも、天下無双中の呂布相手に全無双出せると思うところが、キモい。
その前に、朱治の計略が再起の擁護者な限り、ダメ元で盾にするより、
撤退したパパを計略で復活させる道がとられるはずなので、
朱治きゅんがこの状況に出会えることなど、ほとんど無いと思う。
しかも、赤兎咆哮中の呂布など、直進しかしないのだから、避けることに専念しろという・・・
突っ込みどころ満載の朱治きゅんの勇猛なる理想。
取り合えず、私の腕では絶対に無理です!!