于吉討伐戦は于吉さえ撃破すれば良いという、短い戦闘だった。

于吉の伏兵を解除させる役目はきっちりこなした。これで文句はないはずだ。

この戦場から、一刻も早く離れたくて、周瑜は城に戻ることなく、そのまま帰路に着こうとしたが、

「待てよ、公瑾!!」

求めていたものとは違う声音が同質の雰囲気を孕んで、己を呼んだ。

無視してしまいたい衝動にかられるが、移動速度の差で追い付かれるのは目に見えている。

しぶしぶ立ち止まり振り向いた周瑜の目前には、すでに進撃孫策の姿があった。

「何か、まだ用か?」

早く帰りたいオーラを隠しもしない周瑜にも、さすがは孫策と言うべきか動じた様子はない。

「いや、礼を言ってなかったからな。今日は助かったぜ、ありがとな〜。

でも、よく雄飛の奴は許可したよなぁ?いつも、噛み付きそうな勢いで反対するじゃないか。喧嘩でもしたのかよ〜」

瞬間的にすっと反らされた視線に、あれれ?もしかして図星か?と吃驚だ。

割り込む余地がなさそうなくらいラブラブに見えてたんだが・・意外と付込む隙ありかよ?

ならばと、周瑜の頬に手を添えるようにして、視線を合わせた。

「雄飛に愛想を尽かしたら、いつでも俺のところへ来いよ!!

俺の隣にも、お前の居場所は用意してあるんだぜ?共に出陣して感じたんだ。公瑾・・・お前が必要だと・・・・」

真剣な眼差しに引き込まれそうな魅力を感じる。

だが、私が在りたいのは、この男の隣ではなく・・・・

「私が必要とされたい相手は君じゃない。」



今度こそ立ち去ろうとする周瑜の、間際に見せた、哀しげな表情に、孫策は引き止める言葉を飲み込んだ。

俺がそんなに嫌かよ?ちょっと、誘いをかけたくらいで泣きそうな顔しなくたっていいだろ〜

あ〜あ。俺じゃ不満だってことか?残念だぜ。

あの戦場での目の覚めるような働きに、妖艶な美貌・・・それに、泣きそうな顔も可愛かったのにな。

ブツブツと呟きながら、次第に遠ざかる周瑜を見つめていた進撃孫策だが、一度も振り返ることなく見えなくなった姿には

さすがにちょっと、落ち込んでいたという。






伯符は、私が進撃孫策に誘われることも分かっていて、共に出陣することを許したのか?

進撃孫策を選ぶことはないと、確信があるからだろうか。

それとも、私が進撃に付いていけば、厄介払いになると思ったとか・・・・

いや、そこまで疎まれているはずはない。

だが、絶対に手放したくないとまでは、もう思われていないということだろう。

ぐるぐると負の思考が渦巻くのを止められないが、兵士達の前で弱みをみせるわけにもいかない。

ああ、早く一人になりたい・・・・





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朱治シリーズ内では、(都合上)馬瑜の存在は無視な方向で・・・・












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