周瑜を探しに出た孫策は、周瑜の部下の兵士達とすれ違った。
しかし、周瑜の姿は見えない。
げっ!!もしかして、進撃の野朗に引き止められてるんじゃ・・・
「おい!!公瑾は?共に戻ったのではないのか?」
兵士の一人に詰め寄るように問うた。
「いえ・・・途中で、用があるから先に戻るようにと・・・」
「なんだと!?途中ってどこだよ!!」
「確か・・滝の側だったと思いますが・・・」
進撃と一緒でないことに取り合え安堵するが、あそこは・・・公瑾が落ち込んだときによく訪れる場所だ。
もしかして、進撃に何かされたとか??うぉおお〜待ってろ公瑾!!今、慰めに行くぜ!!
「そっか・・・・ありがとな!!」
な、何かあったのだろうか??鬼気迫る勢いで駆けていく孫策を、
兵士達がぽか〜んと見送っていた。
周瑜は、頭を冷やそうと滝つぼへと踏み入った。
肌着だけを身に着けた姿で、水の中を漂う。
仰向けに浮かび目を閉じると、す〜っと思考の淵に沈んでいった。
「水の中で寝るんじゃねぇよ!!この馬鹿!!」
ぐいっと強い力で、腕を引かれ我に返った。
え?伯符??何故ここに?
いきなり現れた孫策に、驚く周瑜の瞳を覗き込むように問いかける。
「おい。大丈夫かよ?まさか・・・進撃になんかされたとか・・・」
「いや・・・・なにも・・・・」
そう応えた瞬間、ほっとした表情を見せる孫策に、嫉妬してくれたのか?でも・・・・と疑問が過ぎる。
「はぁ〜。お前が進撃と出陣したって知って、気が気じゃなかったぜ!!」
??先の出陣は伯符の知らないもだったのか・・・
私が誤解してただけなのだろうか。だが、あの接吻や、楽しげな雰囲気は?
孫策は、再び思考に沈み始めた周瑜の目元に接吻を落とした。
「目が真っ赤だぜ、公瑾。何があったんだ?」
指摘されて、咄嗟に目元に手を伸ばした。
もしかして・・・泣いていたのか、私は。このようなことで情けない。
「しょ、少々疲れているだけだ。」
孫策は意地をはる周瑜を、ぎゅっと抱きしめた。
「溜め込むなよ。胃を痛めるぜ?言いたいことがあるなら、言っちまえよ。」
孫策の腕の力強さを、匂いを全身で感じる。
そういえば、抱きしめられるのは3日ぶりだ。
たった、3日なのに、私は伯符に餓えていたのだろうか?
この腕に包まれる不思議な安堵感に、今まで悩んでいたのが馬鹿みたいな気がする。
ポンポンと宥めるように背を叩く孫策の手に促されて、
君理殿とのこと、直接聞いてしまおうか?っと勇気が湧いてきた。
「あの・・・・伯符は・・く、君理殿のこと・・・どう思っているんだ?」
意を決して発した周瑜の問いに、孫策は戸惑いを浮かべている。
「口煩い、おっさんかなぁ・・・でも、なんでそんなこと聞くんだよ?」
「・・・・・彼といる伯符が、楽しそうだから。今日の戦でも彼しか見えてなかったようだし、昨日も楽しげに買い物に・・」
「おい・・変な誤解すんなよ。戦は固定イベントで仕方なかったんだし、買い物は・・・ちょっと弱み握られて仕方なくだな〜」
「じゃあ、彼の接吻を拒んでなかったのは何故なんだ?」
続いて落とされた問いに、孫策はガバリと抱きしめていた周瑜の身体を引き離す。
驚きに染まった瞳で、周瑜を見つめ、叫んでいた。
「げっ〜!!お前、見てたのかよ!!うっ・・・あれは、君理の奴が俺が寝てる隙に悪戯を・・・
決して、俺が望んでしたわけじゃないからな!!・・・・でも、ごめん。
も、もしかして、お前、俺と君理のこと誤解して悩んでたってんじゃ?」
「・・・・・・・・・・・・」
黙り込む周瑜に、泣くほど悩ませてしまったのは、自分だったのだと思い知る。
「わぁあああ。本当にすまねぇ。何でもするから、許してくれよ・・・・・」
必死に謝る孫策が、なんだか可笑しくて、思わず笑みが零れていた。
周瑜が浮かべた笑みに、ほっと、安堵の息をつく孫策に周瑜は悪戯な瞳を向ける。
「さっき、何でもするって言ったな?」
「お、おう!!」
「では、伯符が君理殿の唇の感触を忘れるまで・・・・口付けを・・・」
目元に朱を上らせながらも、はっきりと口にされた望みを、
孫策は喜んで叶えたのだった。
口付けの合間に周瑜がぼそり呟いた。
「でも、君理殿は・・伯符のこと・・・」
「そりゃ、”愛しの文台様vの息子”だろ?俺のことは。」
えっ?と目を見張る周瑜に、気付いてなかったのか?と少々驚く。
「古参の武将達は大方、親父に惚れてるだろ?見ればわかるじゃないか。
まあ、親父には抱かれたいって思ってたとしても、俺のことは餓鬼の頃から知ってる、息子みたいなもんだろ?」
「では、何故私に対する当たりがきつかったのだろう?」
「・・・お前、親父に可愛がられてるから嫉妬されたんじゃないか?
ってか、奴に嫉妬されるような”何か”があったんじゃないだろうな!!
蛮勇や進撃はもちろん、親父にだって・・・・俺以外の男の前で気を許すなよ。」
そう言って、再び口付けを降らす孫策だが、
「君理殿に隙をみせて、みすみす唇を奪われた伯符に言われたくないな。」
との周瑜の返しに、再び平謝りする羽目になったのだった。
完
朱治の軽率なる悪戯〜消沈編〜 やっと完結です。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました!!
でも、孫策は誤解してますね〜朱治きゅんはパパに抱かれたいのではなく・・・・ふふふ〜