sunshine






戦の間の、しばしの政治。

それに追われながら、周瑜は忙しく筆を動かしていた。

内政と呼ばれるそれに力を入れなければ「クニ」というものは成り立たない。

たとえ武将が戦に勝っても、クニは滅んでしまうだろう。

だから文官がそれを行うのだ。綿密に、時間をかけて。

いつか見る、未来の為に。

その為に自分はここに居る。周瑜もそう自覚していた。

孫家と出会ってから、自分はここの文官になるのではないかと、そう予想していた。

予想していた、というよりも、その様な予感があったと言う方が正しいだろうか。

周家に生まれ自分もいつかその後を継ぐと思っていたのに、孫家と出会ってから周瑜の人生は変わってしまった。

いや、孫家は周瑜だけではなく、出会う人全ての人生を変えてしまっている。

凄い人達だと、幼い周瑜は思っていた。自分も多分、この人達に人生を変えられると。

そしてそれは現実となり、周瑜は今孫家の手足となって彼らを補佐している。

実に喜ばしい事だ。

喜ばしい事なのだが。

木巻が積まれている部屋の外は、雲一つ無い晴天で。

なんだかそれが少し恨めしくもあった。

「・・・・ふぅ、少し根の詰め過ぎか。」

段々と集中力が切れ始めた自分に気付き、周瑜はコトリと筆を置いた。





立ち上がり窓を開けると、部屋に風が入ってきて周瑜の長い黒髪と舞った。

途切れる事無くふわりと舞い続ける風に頬を撫でられ、周瑜は静かに目を瞑った。

目を瞑るとまた一段と風の感覚が自分の肌から伝わってくる。

暖かで、力強くて。

その風に全身を抱かれた様な感覚に陥る。

それがまるで、良く知る誰かの腕の中の様で。

「・・・・・・って、欲求不満か私は・・・・。」

自嘲しながら周瑜がゆっくりと瞳を開けると、ソレは後ろから唐突に抱き付いてきた。

「だーれが欲求不満なんだよ? なんならこの場で満足させてやるけど?」

「は、伯符っ! いつの間にっ!」

周瑜に抱きついてきたのは、孫策だった。ジタバタと孫策の腕の中で暴れる周瑜など無視して、その体を後ろからぎゅっと抱きしめる。

「公瑾が窓開けるあたりから居たぜ? お疲れの様だったから声かけるの止めといたけど。」

「・・・まったく君は・・・・・。」

力で勝てない事は周瑜自身も分かっているので、抵抗は短時間で終わった。脱力しため息を漏らす周瑜を今だ腕の中に抱いて、孫策は声を立てて笑った。

「いやー、でも俺的には美味しかったけど。俺の愛しの美周郎様が欲求不満〜とか過激な事言うから、俺もついつい乗り気に・・・。」

「ならんで良いから。言葉のアヤだ。」

周瑜が先程の失態を思い出しながら頬を染め静かに諌めると、孫策はブーブーと講義の声を上げた。

「でもアヤでその単語は出てこねーだろーがよー。俺ならいくらでも付き合ってや・・・・。」

「伯符。」

孫策の腕の中でなんとか正面に向きを変えた周瑜は、孫策に向かい無言の氷の笑みを投げかける。

周瑜の笑みに、孫策は固まり言葉を失った。

美人の無言の笑みは、豪傑の睨みよりも怖いものだ。

「あ〜・・・、その、スンマセン・・・・。」

「分かれば宜しい。それより伯符、どうした? 私に用事か?」

氷の笑みからいつもの笑みに戻った周瑜が孫策にたずねると、孫策は周瑜から手を離し、その場に指差した。

「公瑾、ちょっとここに正座して。」

「・・・・は?」

自体が飲み込めなくて、周瑜は目を点にした。

「いいから正座しろって。」

孫策はそんな周瑜に対し、他の言葉を投げかけなかった。

周瑜はしばし考えたが、こうなってしまった孫策は言う事を聞かないので渋々その場に正座する。

「・・・・正座したが、どうするのだ?」

「ちょっと借りるぜ。」

「は? 何を・・・・・、って伯符っ!」

孫策はそのまま周瑜の隣にひざを付き、さらに隣人の太股に向かってそのままダイブした。

「ちょ、伯符っ! 何を考えて・・・・!」

「何って膝枕。ちょっとばかり寝かせてくれよ。」

「・・・別にここで寝ずとも、自分の部屋に行けば良いだろうが。」

はぁとため息を漏らす周瑜に、孫策は口を尖らせた。

「俺の部屋で寝たら、虞翻や呂範が『仕事しろー!』ってうっせーんだよ。やっぱ静かに寝たいだろうが。」

「・・・・それは君が仕事を放り出すからだと思うんだが。」

「まーまー硬い事言うなよ。静かで、公瑾にも触れて、一石二鳥だろうが。」

そう言うと、孫策は頬に当たる周瑜の太股の感触を味わいながら、眠ってしまう。

「伯符、私も仕事が溜まっているのだが・・・・、・・・・ってもう眠ってしまったな・・・・・。」

早々と眠りに就いた人を目の前に、周瑜は湧き出すため息を止められなかった。

怒鳴ろうとも思ったが、自分の膝の上で満足そうに眠る孫策を見て、そんな気も失せてしまう。












ふと窓から空を見上げればその空には太陽が輝いていて、輝きが地上まで届いて陽だまりを作る。

開けっ放しの窓からは心地よい風が入り続け、眠っている人をさらに深く、眠りへと誘う。

目を閉じ規則正しく呼吸を繰り返す孫策に笑みが零れ、周瑜は彼の背中をそっと撫でた。











イヅナ様 ありがとうございます!!

お言葉に甘えて、いただいて来てしまいましたv

何気ない瞬間に孫策を感じて思わず〜欲求不満か?〜って漏らしてしまう周瑜に

ドッキ〜ンっと胸が高鳴り・・・過ぎて動悸息切れが!!

穏やかな陽だまりの中での、ほのぼのラブvいいですね〜vV

でも、膝枕を堪能しつくして目を覚ました孫策は、今度はセクハラとかし始めて・・・ムフフv

↑穏やかな雰囲気ぶち壊しの妄想してすみません。(土下座)




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