避けきれなかった切っ先が、腕を掠めた。
鋭い痛みと焼けるような熱さ。具足越しとは言え、流血は免れないだろう。
「逃げられると思うな!」
「くっ…」
「…公瑾!」
孫策の騎馬隊が、逆方向から勢い良く突っ込んでくる。
陣形が崩れた隙に僅かな兵を纏めると、後ろから挟撃の体勢を取った。
「公瑾!早く退け!」
敵が一瞬散った所で孫策が叫ぶ。
まだ行ける。
…喉から出掛かって、すぐに飲み込んだ。
「…っ」
「馬鹿、何してる!」
「…済まない」

力の入らない腕が、酷く情けなかった。疲弊した幾人かの兵と共に、敵城に背を向ける。
すぐ背後には、敵味方入り乱れた騎馬同士の小競り合い。
一際目立つ孫策の大剣が、怒号と共に大きく薙ぎ払われる。

歩みを止めずに幾度目かに振り返ったその時。
落馬した敵兵の一人が、猛然と孫策に向かっていく。
気づいた孫策が上体を屈めながら、左手に持ち替えた剣を繰り出した。

「…弓を!」
麾下に渡された弓を引っ手繰るように掴む。
即座に矢を番えながら、周瑜は顔を歪めた。限界まで後ろに引いた右腕の傷は、引き攣れて悲鳴を上げている。
弓弦が引っ張られるぎりぎりという音が止んだ瞬間、周瑜は指先を放した。



麾下の騎馬兵が孫策を囲うように前に進み出る。背後に切迫した空気を感じて、孫策はようやく振り返った。
長槍を振りかぶった将が迫っていた。…が、目前でゆらりと揺れて崩折れる。
瞬く間に敵兵に広がり始めた動揺に、孫策は剣にこびり付いた血糊を振り落とした。

「いい、放っておけ」
退散していく敵兵達を馬上から威圧する麾下達を制しながら、孫策は絶命した将の屍体を覗き込んだ。そして、目を瞠る。
顔を跳ね上げた。振り向いてみてもその姿は無い。当然だ、自分のこの手で逃がしたのだから。


背中を狙い定めて突き立てられた、その一矢。
放たれたその軌道だけを、孫策は誇らし気に目で追った。






初めて、TEXTをいただきました!!
ありがとうございます!!
はうぅ〜v周瑜も孫策もかっこよくて素敵ですぅvV
負傷した周瑜を救う孫策も、
孫策の危機に怪我にもかまわず、矢を放つ周瑜も、互いのためにって思いが滲み出てて萌え〜vV










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