孫策と周瑜は戦を終え、再び兵錬場に戻ってきていた。
2勝1敗だったが3連戦できたため、盗賊狩りに費やした分の兵糧は補うことができた。
さすがに今回の選択肢に盗賊狩りは出てきていない。
「よっしゃぁ〜!!俺が特訓してやるぜ!!」
と孫策がやる気満々で名乗りを上げた。
孫策が兵達に課した特訓は”無謀な俵引き”だった。
普段は兵達を上手く鼓舞し、成果を上げている孫策だったが、
盗賊狩りの失敗を挽回したいと、気が焦った。
兵達は逸る孫策についていけずに、特訓は最悪の結果となってしまった。
「また、人選を誤ったようですな・・・・」
再び、張昭がため息を漏らす。
「・・・・・・・・・」
さすがに返す言葉がない孫策を心配し、周瑜が歩み寄る。
「伯符・・・・」
「すまねぇ。公瑾。少々焦り過ぎちまったみてぇだ。
まあ、この分は戦で取り戻してやるから、心配すんなよ。」
特訓の失敗など吹っ切ったかのように、すぐに強気な笑みが浮かんだ。
凹んでいては、士気が下がるから、強気に振舞うことは必要だ。
だが、連続での失敗は、例え孫策でも堪えているはずで。
無理しているのではないかと思う。
無理して、空回ってしまわなければいいが・・・・
「ど〜したんだよ?さっさと出陣しようぜ!!」
そう言って、戦場に足を向けた孫策を、咄嗟に背後から抱きしめていた。
「公瑾!?」
驚く孫策を更に強く抱きしめた。
抱きしめるというより、抱きついているようだとか、大勢の兵士達の前だとか
分かってはいるけれど、この腕を離す気にはなれなかった。
「無理をしないでくれ。」
孫策にだけ聞こえるように囁くと、
腰に回した手に、孫策の手が重なった。
「・・・・必要な無理もあるってわかってんだろ?」
「だが・・・・心配ぐらいはさせて欲しい。」
「わかった。心配されるってのも、悪くねぇしな。お前がこんな可愛い行動をしてくれるんだから。」
ふっと、孫策の肩の力が抜けたのが分かった。
ほっとして、腕を解こうとしたが、孫策の手に阻まれ叶わなくなる。
振り返った孫策は、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「伯符・・・そろそろ離れないか?」
「何言ってんだ?お前から抱きついてきたんだろ。」
今更ながら、自分の行動を省みると、一気に羞恥心が込み上げた。
もしかしたら、顔が赤くなってしまっているかもしれない。
そんな己の表情を晒したくなくて、周瑜は孫策のマントに顔を埋めた。
「殿!!公瑾殿!!そろそろ、ご出陣・・・・・を・・・・」
凌操は、寄り添う2人の姿に言葉を途切れさせた。
共に迎えに来た周泰も、隣でぽかぁ〜んと2人の姿を見つめている。
隠れるように、孫策の背に埋められた周瑜の目元が赤く染まっているように見えて、
その愛らしい表情に眼福だな・・・と思ってしまった。
周囲の兵士達も大半がぼぉ〜っと見惚れているようだ。
「どうだ?羨ましいだろ〜。」
見せびらかすように、孫策が周瑜の腕を引き寄せる。
コクコクと頷く周泰や兵士達を満足気に見渡すと、孫策はやっと周瑜の腕を開放した。
「よぉ〜し。皆、出陣するぜ!!」
孫策に従い戦場へと向かう一行の最後尾で、
「ふぉっふぉっふぉ、まだ若いのぉ〜」
と張昭が楽しそうに見守っていた。