作戦通り、周瑜の計略で減った敵部隊の隙を突いて、孫策は敵城門めざして進軍していた。

焼き残った敵部隊の撃破と、周瑜の護衛は、周泰と凌操に任せて大丈夫なはずだ。

俺の役割は、周瑜が作ったこの機会に、何としても攻城を決めることだ。

焼き払う直前に、SR孫策の突撃を受け兵力を減らしていた周瑜のことが心配だが、

振り返らずに、真直ぐに敵城を目指した。

だが、あと少しで攻城エリアに到達するという時、背後から周泰の焦った声が聞こえてきた。

「公瑾殿!!その兵力で戦場に留まるのは危険です。帰城してください!!」

「問題はない。兵力は少なくとも、計略は放てる。相手の奥義が再起ならば、伯符だけで先行しては危険だ。」

「ですが、業炎の範囲に捕まったら、即撤退ですよ。」

「相手の奥義が極滅業炎ならば、再起してこないのだから、私は撤退しても構わないさ。」

周泰が諌めるも、あっさり周瑜に丸め込まれているようだった。

無理をせずに下がれと命じるしかないかと、孫策が振り返った瞬間、

「これぞ、必勝の策!!」

と軍師周瑜の声が聞こえ、孫策の目前に炎が出現した。

孫策の辿り着いた城門だけを残し、敵城前一帯が灼熱の炎に包まれる。

孫策は炎によって、敵城門に閉じ込められただけでダメージは受けていない。

しかし、戦線を上げつつあった周瑜・周泰・凌操が業炎の範囲に捕まっていた。

兵力の減っていた周瑜は撤退し、周泰と凌操は脱出したが、自城に引くしかないほど瀕死だ。

戦場には、孫策隊と敵の陣略だけが残った。


孫策は燃え盛る炎に動揺する兵士達に檄を飛ばし、城攻めに徹していた。

しかし、誰も居ないはずの背後に気配を感じ、振り返ると軍師周瑜の姿があった。

軍師が戦場に出てくるなど、信じられない。

驚きに目を瞠る孫策に、軍師周瑜がゆっくりと近づく。

軍師周瑜は魅惑的な笑みを浮かべ、孫策へと手を伸ばした。

「城を攻め急ぐことはないだろう?私を・・・・感じて見たくはないか?」

「いや、遠慮しとくぜ。」

「連れないことを言うな。折角、私をじっくりと味わう機会をやるというのに。」

「・・・・・・・・・・」

「一歩、下がるだけで、私の腕の中だぞ。一度味わえば、病み付きになる。」

安全圏の城門から離れて極滅業炎の中に来いと無茶苦茶な誘いをかける。

「そんな、物騒な誘いに誰が乗るかよ。」

「騙されたと思って、私の炎を感じてみろ。きっと私が欲しくなる。」

すっと、軍師周瑜が間合いを詰め、孫策の耳元で囁いた。

「R周瑜よりも、私を欲するようになる。私の必勝の策は、赤壁の大火に勝ると使用率が証明しているだろう?」

「使用率?関係ねぇな。俺が共に戦場に立ちたいのは、あいつだけだ。」

孫策の答えに、面白くなさそうに軍師周瑜が孫策から身体を離す。

「ふっ、共に・・・か・・・」

軍師周瑜に浮かんだ笑みが、少々寂しそうに見えて気になった。

俺の公瑾より勝っていると俺に主張して、

撤退中のSR孫策が居るであろう、城の目前で、俺を誘うような物言いをする。

コイツの真意はどこにあるのだろう?

俺に業炎を味わわせたいなら、俺が陣略の範囲を通り過ぎる前に奥義を発動すれば良かったはずだ。

何を考えているのか全く読めない・・・・・・が、何故か放っておけない。

すでに、一度城門への攻撃が通り、勢いづいている。

城攻めは配下の兵士達に任せても大丈夫そうだと、孫策は軍師周瑜に向き合った。

「お前・・・こんな場所で、俺を誘惑してていいのかよ?SR孫策が嫉妬するぜ?」

「嫉妬?したところで、撤退中に何ができる?

私を残して勝手に撤退した伯符に、文句を言われる筋合いはない。」

「なんだ?お前等、喧嘩中かよ?」

「・・・・・・・・」

図星だったのか、軍師周瑜の表情が変わる。

今まで、誘うような色を浮かべていた視線が、拗ねたよう逸らされる。

「しょうがねぇな。お前の陣略が消えるまで、動けねぇし・・・・俺で良ければ八つ当たりしてもいいぜ。」

不満は、誰かに話せば案外すっきりするものだ。

しかも、俺は八つ当たりする相手としては、最適だろ?

孫策は軍師周瑜に近づくと、業炎の熱風に煽られて乱れる髪に、そっと触れた。

「何があったんだ?俺に話してみろよ・・・・・・”公瑾”」

初めて軍師周瑜のことを、そう呼んだ。

たったそれだけのことなのに、なんだか、浮気をしているような気分になった。





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