周瑜は戦の様子を、軍師席で張昭とともに見守った。

戦況が確認できるというだけで、部屋で寝ているときに感じたような不安はなくなった。

周姫も小喬も予想以上に上手く部隊を使いこなしていたし、

2人の素武力の不足は、孫策がその武力の高さで、孫堅が機動力で補っている。

中盤戦以降は士気でも攻城ゲージでもリードを取れなかった分、苦しい展開にはなったが、自軍の勢いに衰えはない。

孫策と周姫のコンボで勇猛果敢に攻め上がって行く姿は、思わず見惚れてしまうほどだ。

しかし、相手の堅実な守勢の前に、攻城には至らず、序盤に奪われたリードが尾を引いての負け戦となった。

戦局をひっくり返す程の威力を欲するとなると、号令やダメ計、もしくは機動力のある超絶強化が必要になってくるだろう。

城を落とさないための防衛戦だったのだから、単体強化ばかりの寄せ集めの布陣にしては、戦果は上々だと思われた。

戦を終えた部隊が順番に引き上げてくる。

孫策や周姫・小喬の無事な姿を確認してホッとした。

しかし、安心したことで張り詰めていた気力を失ってしまったのか、急に目眩に襲われた。

ふらつく身体を何とか保とうとすると、椅子がガタリと派手な音をたてる。

その音に気付いた張昭が振り返った。

「公瑾殿!?」

「あっ・・・すみません。」

今にも倒れそうな周瑜を、張昭が咄嗟に支えた。

張昭は、周瑜のこめかみから流れる汗を袖で拭い、額に手を当てる。

「こりゃ、更に熱が上がっておりますな。誰か!!公瑾殿を部屋へ!!」

駆け付けた兵士2人が脇から周瑜を支える。

周瑜は、孫策達に見つかるまえに部屋に戻れるといいなぁなどと思いながら、

大人しく、軍師席を後にした。





「公瑾!!・・・・・あれ?公瑾は?」

周瑜が軍師席を後にしてしばらくした頃、孫策が勢いよくやってきた。

「部屋に戻りました。」

「そうか、なら良い。」

張昭が事実をつげると、孫策は安心したように階段を下りて行った。

孫策は、周瑜が軍師席で張昭と一緒に戦の様子を見ていたため、

まだ、そこにいるようならば、部屋に連れて帰り、寝台に放り込むつもりだった。

だが、自分でもどったというのならば、問題はない。

小喬と周姫はすでに周瑜の部屋に向かったはずなので、看病は任せればいいし、

戦の後には、やらなければならないことがたくさんある。

小喬と周姫が早々に放り出していった、周瑜隊の兵士も労ってやらなければならないしなぁ〜。

そして、必要な事後処理を終えると孫策は周瑜の部屋に向かった。

そろそろ、ひと眠りした周瑜が目を覚ましている頃かもしれない。

部屋の扉を開け、声を掛けようとしたら、周瑜が唇に指をあてて、静かにして欲しいと伝えてきた。

周瑜自身は寝台の上で身体を起こしていたが、小喬と周姫が寝台に頭を預けている。

「2人とも寝てるのか?」

「ああ、疲れが出たみたいだ。でも、大きな怪我がなくてよかった。」

周瑜が温かな目で2人をみて、それぞれの髪を撫でる。

「そうだな。」

「伯符が守ってくれていただろう?」

「まあな。お前が大切な者は、俺にとっても大切だ。」

「ありがとう。」

孫策は周瑜を背後から抱きしめ、周瑜が周姫を撫でていた手に自分の手を重ねた。

周瑜が孫策を振り返り、2人の顔が近付く。

そこには、二人だけの空間が出来上がっていた。

あと少しの距離を縮めて、互いの唇が重なるのがとても自然に思える。

孫策は、周瑜と唇を重ねようとしたが、ふっと周瑜が顔を反らす。

「いいだろう?気持ちよく寝ているし。」

「でも、伯符にうつったら・・・・」

てっきり、小喬と周姫の存在が理由で、口付けを拒んだのかと思ったから、

周瑜が自分のことを考えてくれていたのが嬉しかった。

ならば、なおさらそんな理由で拒ませはしない。

俺は、簡単に病をもらう程、やわな鍛え方はしてねぇしな。

「公瑾。」

有無を言わさぬ声音で、周瑜を呼ぶ。

真っすぐに周瑜をみつめ、逃げるなよと訴える。

「分かった。万が一、うつしてしまったら、今度は私が伯符を守るよ。」

周瑜はそう言ってほほ笑むと、孫策の口付けを受け入れた。









おわり















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