その日の夜、漢軍孫堅は酒を片手にふらりと天啓孫堅を訪ねた。

酒を飲もうと誘うと、天啓孫堅も二つ返事で受け入れた。

互いに、酔いが回ったころ、漢軍孫堅は朱治の話題を切り出した。





この話題を切り口に天啓の冷静な仮面を剥がしてやるぜ!!

「なぁ〜天啓の、朱治ちゃんって俺らと同い年だろ?それにしては、可愛いよなぁ〜」

「そうだな。気に入ったか?」

平静な顔で聞いてくるとは・・・こりゃ朱治ちゃんは脈なしか?

「ん〜〜。でも、あの子が慕ってんのはお前だろ?」

「・・・・・・ああ」

ふ〜ん。朱治ちゃんの気持ちは知ってはいるわけだ。

そういやぁ、知っているのに、はぐらかしてばかりだっていってたな。

贅沢な奴め〜。

「なんだ?持て余してのか?」

「朱治は、少々夢見がちなところがあるからな。」

「いい夢見せてやる自身がないってか?情けないぜ天啓の。」

挑発的な視線を向けたが、天啓孫堅は取り合ってくれない。

ふっと笑みを浮かべただけで、酒を口元へと運ぶ。

もしかして枯れてんのか??

いや、違う・・朱治ちゃん以外には応えてるって情報だったか。

「でも、他の奴にはいい夢見せてやってんだろ?程普だの、黄蓋だのにはさ。」

「・・・・・・・・」

「奴らは良くて、なんで朱治ちゃんがダメなんだ?」

「俺は、朱治の妄想の中のようには・・・・無理だ。」

「何がどう無理なんだ?」

言いにくそうに言葉を切る天啓孫堅に、ここが攻め時か?としつこく問を重ねた。

「この話は、もう止めにしないか?」

天啓孫堅の白旗すらも無視して、強引に続ける。

「なんで、朱治ちゃんを抱いてやらねぇんだよ?」

「それは・・・・朱治が望んでいないからだ。」

??朱治ちゃんが望んでいない??あれ?どういうことだ?

話が見えなくなってきた。

だが、天啓孫堅の横顔には、若干の動揺がみえる。

これ以上、聞くなという無言の圧力も感じるが、そんなものに怯む俺ではない。

話はみえないが、このネタは天啓のを動揺させるものではあるらしい。

「じゃあ、朱治ちゃんはお前に何を望んでるんだ?」

「・・・・・・」

天啓孫堅は、押し黙ったまま視線をそらす。

相当、口にし難いことなのかと思うと、ますます興味がわいた。

漢軍孫堅は、天啓孫堅の肩に腕を回すと、耳元で囁いた。

「もしかして、朱治ちゃんは・・・・特殊な性的嗜好があるとか?」

「・・・・知りたければ、朱治に聞け。」

天啓孫堅は、相変わらず視線をそらしたまま、応えをはぐらかす。

「恥ずかしがるなよ、天啓の。」

漢軍孫堅は天啓孫堅の顎を掴むと、強引に視線を合わせた。

紫色の瞳が憮然と見返してくる。

色素の薄い瞳を探るように見つめた。

その瞳には、吸い込まれてしまいそうな魅力があった。

朱治ちゃんもこの目にやられたのだろうか?

今は冷静な輝きを放っているこの瞳の、違う輝きを見てみたくなる。

漢軍孫堅は、その瞳の魅力に引き寄せられるまま、天啓孫堅に口付けた。

「何をする!?」

驚く天啓孫堅の体を強引に床に押し倒す。

両手を床に縫いとめると、馬乗りになった。

逃げようとする身体を体勢の有利さを利用して抑え込む。

天啓孫堅の唇を存分に味わってから、ゆっくりと口づけを解いた。

悔しそうな天啓孫堅の顔を見下ろすと、心地よい優越感に満たされた。

ああ・・・朱治ちゃんが望んでいることが分かっちまったぜ・・・

止めを刺すように、その結論を天啓孫堅にぶつける。

「もったいぶらずに、朱治ちゃんに抱かれてやればいい。」

「なっ・・・・」

「図星だろ?」

「・・・・・だから、無理だと言っている。」

「そうか?お前、見るからに男らしい男って感じだけど・・・ずっげ〜美味そうなんだよな〜」

「馬鹿な・・・」

「俺でも、お前相手ならいけそうな気がするぜ?」

その言葉を裏付けるように、漢軍孫堅は天啓孫堅の首筋に舌を這わせる。

天啓孫堅からさしたる抵抗は返ってこない。

そのかわり、溜息とともに何事か呟くのが聞こえた。

「はぁ〜。お前は朱治の妄想の度合を知らぬから、そう言えるんだ。」

「なんだって?」

「いや・・なんでもない。朱治には無理だが、お前になら悪くないぞ漢軍の」

そう言うと、天啓孫堅の表情が一変して魅惑的な笑みが浮かんだ。

完全に、誘っているとしか思えないその態度に、驚きを隠せない。

「なんだ?いけそうな気がしたんじゃなかったのか?」

しばし固まっていると、天啓孫堅に笑われた。

組み敷いているのは自分なのに、いつの間にか主導権を天啓のに握られている気がする。

それが、面白くなくて少々乱暴に唇を重ねた。





















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