翌日、漢軍孫堅は昨夜知り得たことを伝えるために、朱治を探していた。
しかし、朱治は勤務中でもなければ、部屋にも居ない。
ということは・・・・朱治ちゃんのことだから、天啓のが見えるところにいそうだなぁ〜
そう、当たりを付けるとまずは、天啓孫堅の行方を尋ねた。
出陣前の訓練中と聞き、訓練場に向かうと、天啓孫堅が特訓を行っていた。
天啓孫堅の姿が見えるだろう場所を、ぐるりと見渡すと、城壁の上に朱治を見つけた。
漢軍孫堅は城壁に登ると、朱治の隣に並んだ。
「よぉ〜朱治ちゃん。今日も、愛しいお方の鑑賞かい?」
「・・・私には、見ていることぐらいしかできませんから。」
漢軍孫堅は元気のない朱治の顔を覗き込むと、うにぃ〜っとやわらかな頬を引っ張った。
「元気だせよ〜。折角、例の調査結果持って来てやったんだからさ。」
「本当ですか!?」
「ああ、聞きたいだろ?」
コクコクと必死に頷く朱治の肩を漢軍孫堅が抱き寄せた。
唇を朱治の耳元に近づけて囁く。
話が聞こえる範囲内に余人の姿はないから、声をひそめる必要はなかったが、
秘め事めいた雰囲気が楽しくて、必要以上に朱治と密着する。
「天啓のが望むことと、朱治ちゃんが望んでいること、どちらを優先するかが問題だ。」
「・・・・それはどういうことでしょうか?」
「天啓のは朱治ちゃんに抱かれたいとは思ってねぇからな。朱治ちゃんが奴を抱きたいなら無理強いすることになる。」
「それは・・・私には、全く望みがないと・・」
漢軍孫堅は、青ざめた顔で唇を震わせる朱治の頬に手を伸ばすと、指先でくすぐるように撫でた。
「決めつけるのは早いだろ?一度、既成事実を作っちまえば、なんとかなるかもしんねぇし。」
「そんなに、簡単に叶えば苦労しません。何度も迫っても、するりと交わされてしまうのですから。」
「そうか?天啓の意思を無視していいなら、薬をつかうなり、人に協力を頼むなり、いくらでもやりようはあるだろ?」
「・・・・・・・・」
俯いて黙り込んでしまった朱治を、しばし見守る。
ギュッと胸の前で握りしめられた拳が、震えている。
「朱治ちゃんが天啓のをどうしても抱きたいなら、俺が協力してやるぜ。」
思い悩む朱治を、そそのかすように、漢軍孫堅が提案を持ちかけた。
「でも・・・それは・・・それでは、満たされるのは私の欲望だけで・・・」
「じゃあ、どうする?天啓のが望むことを優先するのか?」
「・・・僅かでも文台様が私に望んでくださることなどあるのでしょうか?」
「う〜ん、そうだなぁ〜。天啓のが望んでいることは何か、ちゃんと聞いてみな。そしたら、道が開けるかもしれないぜ。」
「でも、怖いです。聞くことで、僅かな希望すら断たれる気がして。」
「自信持てよ。朱治ちゃんは、とびっきり可愛いんだから。」
漢軍孫堅は朱治をギュッと抱きしめた。
「今夜、俺が機会を作ってやろう。」
大丈夫、天啓のは朱治の気持ちを疎んじているわけではないのだから。
朱治が自分の望みばかりにとらわれなければ、きっと上手くいくはずだ。
だから、早く決着をつけて、朱治の幸せな笑顔を見たいと思った。
「・・・・どうしてそこまでしてくださるのですか?」
腕の中から、おずおずと見上げる朱治に、漢軍孫堅の頬が緩む。
「ん?これでも、俺は朱治ちゃんのこと気に入ってるだぜ。」
「孫堅さま・・・」
「だから、遠慮なく甘えていいぜ。」
漢軍孫堅は、ポンポンと朱治の頭を撫でると、上機嫌で城壁を降りていった。
漢軍孫堅の戯れ4は裏に収納してあります。
漢軍孫堅×天啓孫堅な内容になります。
話の流れ的には、4を飛ばして5に進んでも、まったく問題ございません。