今朝早く、朱治が孫堅の部屋から出てきたらしい。

しかも、酷く慌てた様子で一目散に走り去っていったという噂を小耳にはさんだ程普・黄蓋・韓当・祖茂は早速、朱治を呼び出した。

この5人は、10年以上前から互いを牽制しつつ、孫堅に対する抜け駆け禁止の同盟を結んでいた。

しかし、孫堅に誘われる形で、程普が陥落したのをきっかけに、同盟も形を変え、

今は、互いの情報を共有したり、孫堅萌え語りをしたりする集まりとなっていた。

いわゆる、孫堅ファンクラブである。

このファンクラブの掟は3つ、

@孫堅との関係が進んだら自己申告すること。

Aこの会で得た情報は、決して外には漏らさないこと。

B孫堅の望まぬことを強いたらフルボッコ。



「昨夜殿と何か進展があったのか?」

ファンクラブ会長の程普が聞くと、朱治は嬉々として語りだした。

「聞いてください!!ついに、ついに私の想いが殿に通じたのです!!」

「なっ、まさか・・・」

「朱治に、先を越されたというのか?」

その言葉に祖茂と韓当が色めき立った。

この二人、孫堅と際どい触れ合いはあるが、身体を繋げるまでは至ったことがない。

だから、ほとんど相手にされていなかった朱治に、一気に追い抜かれたのかと焦ったのだ。

「まあまあ、まずは朱治の話を聞こうではないか。」

黄蓋は、2人を宥めると、朱治の続きを促した。

実は、かくかくしかじかで〜と昨夜のことの顛末を朱治が話し出すと、他の4人は話の腰をおることなく聞き入った。

話を聞き終えた4人は、どこがどう進展したんだろう?

今までとあまり変わらないのでは?

進展したというより、今までただ朱治が気づいてなかっただけなんじゃないか?

と思ったが、うっとりと幸せそうに語る朱治にわざわざ水を差すような無粋な輩はいない。

しかし、朱治の話の中には、進んだんだかどうだか分からないような朱治と孫堅の関係よりも、気になることがあった。

「良かったな。それで、どうして殿はお前が部屋に入った時に全裸だったんだ?」

韓当は恋する乙女モードの朱治の肩をポンと叩くと、一番気になることをズバリと聞いた。

「それは・・・・・」

言いにくそうに、朱治が言葉を途切れさせる。

「たぶん・・・漢軍の殿がお相手かと・・・・」

漢軍の殿がお相手かと・・・・漢軍の殿が・・・・漢軍の・・・・

4人の頭の中を朱治の声がこだまする。

「酷いんですよ、漢軍の殿ったら・・・・」

と朱治がなにがしかの文句を言っているようだが、他の4人の耳には、そんな朱治の囀りなど届いていない。

睦み合う漢軍孫堅と天啓孫堅の妄想がそれぞれの脳内で繰り広げられていた。

「うぐっ・・・・も、も、萌えぇええええ〜。」

祖茂が鼻血を垂らしながら、絶叫した。

その絶叫で、他の3人も妄想の国からの帰還を果たす。

「さてさて、どちらの殿から誘ったのやら。」

と、赤く火照った顔を手で仰ぎながらつぶやくのは程普。

「天啓の殿の魅力に漢軍の殿がよろめいたところで、天啓の殿が誘ってそのまま事に至ったのではないか?」

ニヤニヤと、未だ妄想の世界に片足を突っ込んでいる黄蓋が、そう言い当てる。

さすがに、10年も追い続けていれば、孫堅の行動パターンはある程度読めるらしい。

「あり得るな。それにしても、なんというか・・・・見ごたえのありそうな・・・」

「ああ。ぜひとも、覗いてみたいわい。」

韓当の呟きに、程普が同意する。

「ワシが覗いているのに、気付いた殿が、お前も混ざれと誘ってくださったら・・・・」

そんな都合のいい仮定を、黄蓋が口にする。

「美味しい。それは、美味しすぎる!!」

更なる、興奮に襲われた祖茂が鼻血を倍増させる。

それぞれの頭の中では、漢軍孫堅と睦み合う天啓孫堅を美味しく頂く図が出来上がっているのだろう。



どうやら、妄想は朱治だけの特権ではないらしい(笑)























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