「公瑾!!絶対に隙を見せるんじゃねぇ〜ぞ!!」

孫策は、心配でたまらなかった。

周瑜ワラが遠征をすることになってしまったのだ。

俺がいないのをいいことに、下心を秘めて公瑾の下に忍んで来る奴だっているかもしれない。

安全なのは、親父に心酔しすぎて公瑾には害がなさそうな韓当ぐらいだ。

他の奴らは若さに任せて、何をするか分かったものじゃない!!

くどくなろうとも、いくら言い募っても足りない気がしていた。

「義公・・・・ちょっと・・・」

心配の余り、共に遠征に行く韓当に耳打ちする。

「公瑾に、悪い虫が寄ってこないように見張っててくれよ!!頼む!!」

「分かりました。お任せください。」

「もし・・・何かあったら、親父にあることないこと吹き込んでやるからな・・・抜かるなよ!!」

「わ、若・・・・(焦)」

頼むと懇願した次の瞬間に、脅してよこす孫策の理不尽さに困惑するが、

それだけ、心配が尽きぬのかと思うと、微笑ましい。

もし、夜更けに忍び込もうとする者があれば、私が責任を持って叩き出してやろうと心に決めた。

殿に、あることないこと吹き込まれては、困ってしまう・・・しな。

だが、孫策はまだ周瑜が心配なようで忠告を繰り返す。

「お前ためとか、お前が寂しいだろうからとか親切そうなこと言われても、

夜更けに忍んで来るような奴は、絶対に下心があるんだからな!!絶対、招き入れたら駄目だからな!!」

ギクリ!

孫策がそういい募った瞬間、韓当、黄蓋、程普の醸し出す雰囲気が・・・・多少、強張った気がした。

???????

孫策は頭の中に浮かんだ疑問符を今は無理やり追いやり、周瑜に向き直る。

「分かったか!!」

「ああ、そんなに心配しなくてもも大丈夫だ。伯符こそ、私がいなくて寂しいからって、浮気するなよ。」

「お、おう。」

周瑜は、孫策へとひらひらと手を振ると、早く早くと促す、周瑜ワラの面々と、遠征先へと出発した。



周瑜の後姿が見えなくなるまで、見送っていた孫策は、先ほどの妙な雰囲気が気になって、黄蓋と程普を盗み見た。

何故か互いに肘で突付き合っているようだった。

「おい、お前・・・さっき思い出しただろう?」

「おぬしこそ・・・・」

「・・・・・・・・・・・黄巾の乱の時だったよな・・・」

「ああ・・・・・あの時のわし等の下心まで見透かされたようで、焦ったわい。」



こそこそと囁きあう黄蓋と程普の背後にそっと忍び寄る影が・・・

気配を消したまま、近づいた人物は、いきなりガシリと2人の肩に手を回して顔を覗き込んだ。

「二人とも・・・・何を思い出したのだ?」

「と、殿!?」

ギッギッギッっと音がしそうな程ぎこちない動きで二人は堅パパを振り返る。

「あの・・・・・少し・・・昔のことをですな・・・・・」

「そうですぞ・・・ちっと、懐かしい思い出話を・・・・」

ふ〜ん。と何故か楽しげな堅パパに、黄蓋と程普は何故かいや〜な予感に焦りを禁じえない。

やばい・・・殿はどこから聞いておられたのか。

まさか・・・・まさか、最初からなんてことは・・・・

「そうか、そうか、さては・・・・俺との熱い夜を思い出していたのだろう・・・」

後半は、耳元で低く囁かれ、思わず胸を高鳴らせてしまった。

「ふふっ・・・その下心、今宵遂げてみるつもりはないか?」

余りに魅力的な堅パパの誘いに、フラフラと引き寄せられそうになる。

だが、年の功で何とか体勢を立て直した程普は、完全に目がハートになっている黄蓋の脛を蹴り付けた。

おぅ!?っと正気に戻った黄蓋を確認し、わしも殿のことはお見通しですぞ〜っと無理やり余裕ぶった笑みを浮かべた。

「先日、丁度良い酒が手に入り申した。わし等を酒の相手にご所望でしょう?喜んでお相手いたしますぞ。」

「うっ・・・・・なんで、分かるんだ・・・」

「昨日から、奥様方が揃ってお出かけで、お寂しいのでしょう?」

「寂しいからって、浮気しないでくださいねとでも釘を刺されて、遊びにも行き辛いというとこですかな?」

一転して、からかう調子の2人に、少しムッとする。

だが、気を取り直して魔魅力(チャーム)全開で再び囁いた。

「知らない女を寝台に引き入れるなと言われただけだ・・・・知っている”男”ならば問題ないだろう?」

「分かり申した。今宵はとことんお付き合い致しますぞ。・・・・酒の相手として。」

「・・・・・・・意気地なしめ」

「本気になられたら、困るのは殿でしょうに。」



「・・・・・別に・・・困りはせぬ・・・」

最後は、黄蓋や程普にすら聞こえぬように口の中だけで呟いた。

まあいい、今宵はとことん飲んで2人を振り回してやろう。

酔った頭で、困惑する2人の様子を堪能したら、とても楽しそうだ。

堅パパは意外とウキウキと屋敷に戻っていった。




・・・・・・・・・・・・

親父たちのやり取りをこっそり聞いていた孫策は、危険な香りを感じていた。

だが、はっきりとは聞き取れなかった分、余計気になってしまう。

公瑾もいなくて暇だし・・・親父たちの酒宴に乱入してやろうか・・・

うん。なんだか面白そうだ。




つづきへ






すみません、続きます。
時間が飛ぶので、ページを分けただけですが。
「親の寝室覗くことなかれ」はタイトルはアレですがちゃんと表仕様の予定ですv
過去の熱い夜が万が一気になる方は、裏ベージへ(十中八九、後悔すると思うので、お奨めはできませんが・・・)






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