「なぁ、皆でゲームをやらないか?勝者には、褒美に金一封を出すぞ。」

「どのようなゲームをするのですかな?」
いきなりすぎる孫堅の誘いに、皆を代表し、程普が尋ねる。
「それは、少数決ゲームだ!!」
・・・・・・・・・・・・・なんだそれは???
概要が分からずにポカーンとしている武将達を見渡して孫堅は説明を始めた。

「少数決とは、多数派ではなく、少数派が勝者となるゲームだ。
まずは、代表者がイエスかノーかの二者択一となる問題を出題する。
皆に、このイエスとノーの投票用紙を渡すから、どちらかを制限時間内に投票してくれ。
開票の結果、少数派の回答をした方が勝者だ。次の投票へと進める。
最後の一人か二人になった時点で終了だ。最終勝者には褒美に金一封を送ろうと思うがどうだ?」

孫堅の説明に、なんか面白いかも〜っと武将達の目が輝いた。
ゲームとはいえ、殿から褒美をいただける機会を逃す手はない。
わしはやりますぞ!!俺もだ。私も参加致します。
と、参加表明をした武将は、
程普、黄蓋、韓当、朱治、祖茂、呉景、蛮勇孫策、雄飛孫策、赤壁周瑜、周泰の計10名だ。

「ならば、早速・・・」
「ちょっと、待てよ。」
ゲームの開始を宣言しようとした孫堅に、蛮勇孫策から待ったが掛かった。
「勝者への褒美だが、金一封じゃ面白くない。少数決の前に、参加者の多数決で褒美を決めたらどうだ?」
「おっ、いいじゃねぇか。面白そうだな。俺は乗ったぜ!!」
意気投合する息子二人に、孫堅も面白そうだと思ってしまった。
俺に遠慮してか、口に出して賛同はしていないが、幾つもの期待に満ちた視線を感じる。
皆が俺からの褒美に何を望んでいるのか、興味もあるしな。
より、楽しめるならばと気軽に受け入れる。
「ははは〜。褒美は多数決で決めてよいぞ。だが、俺が出せる範囲の物でな。無茶は言ってくれるなよ。」
孫堅から出た了承に、おおおっ、さすがです殿〜!!
と一気に武将達が盛り上がる。
まずは、個々に欲しい褒美があるらしい、武将達による、多数決が始まることとなった。

準備が終わったところで、孫堅の説明が再び始まる。
「それでは、褒美の多数決を開始する。
配った投票用紙に望みの褒美を書いて箱に投票してくれ。記名の必要はない。
だが、俺が無理だと感じた場合、その票は無効とするからな。
制限時間は10分でいいよな。それでは、始め!!」



投票用紙とにらめっこを始めた武将達を伺いながら、周瑜は雄飛孫策へと歩み寄った。
「伯符は何が欲しいんだ?」
「へっへっへ〜。公瑾と一緒に3連休が欲しい。」
「3連休で旅行でも?」
「ああ、たまにはいいだろ。」
「ふふっ、それは楽しみだ。ならば、多数派を作ってみるか?」
えっ!?と驚く孫策に、多数決の意味がちゃんと分かっているのだろうかと少し不安になる。
「伯符が望んでも、同じ票が多数入らなければ、褒美にはならないだろう。」
「そうだよな〜。う〜ん、でも他の奴等の望みにも興味があるんだよなぁ。」
伯符は、このゲームに勝ちたいというよりは、楽しみたいということか。
ならば、私もこのゲームの成り行きを共に楽しもう。
「では、私も好きに望みを書かせてもらうとしよう。」
「お前は、何が欲しいんだ?」
「秘密だ」
いいじゃねぇか、教えろよ!!っと詰め寄る孫策に気を取られていた周瑜は、背後の人物に気付かずにぶつかってしまった。
「あっ、すみま・・・・」
スッと髪に触れられ、謝罪の言葉が途切れる。
「俺ならば、勝利を称える口付けが欲しいな。もちろん、お前からの。」
背後に迫っていた蛮勇孫策が、周瑜の髪に唇を寄せてニヤリと笑みを浮かべた。
「なっ・・・」
驚きに目を瞠る周瑜が行動を起こすよりも速く、雄飛孫策によって身体がグイッと引き寄せられた。
渡さないとばかりに、身体を包み込む腕に力が込められる。
完全に敵意むき出しで、がるるうううぅ〜っと、雄飛孫策が蛮勇孫策を威嚇する。
「俺の公瑾に気安く触ってんじゃねぇよ!!」
「ケチケチするなよ。減るもんじゃなし。」
「い〜や。減る気がする!!ってか、親父からの褒美に、公瑾は関係ないだろ!?」
・・・・・・・・・
僅かな沈黙を挟んで、蛮勇孫策がフッと笑んだ。
「そうか、”親父から”のか・・・それは残念だ。」
残念と言いながらも、意外とあっさりと引いた蛮勇孫策に、周瑜は違和感を感じた。
去り際に、蛮勇孫策がチラリと投げた視線の先に居たのは3老将で・・・・・・
彼は何か企んでいるのではないかと、嫌な予感がした。



全員が期待を込めて見守る中、孫堅が開票を行う。
孫堅からの褒美・・・それも、己の望んだものを貰える可能性があるのだ。
一枚ごとに、ざわざわと一喜一憂する武将達は、皆真剣だ。
開票結果は・・・・
・金一封       1票
・殿と遠乗り     1票
・殿と手合わせ    1票
・殿の御髪数本    1票
・恋人と三連休    2票
・殿からの接吻    4票

「俺からの接吻が、4票か・・・・・」
言葉を途切れさせた孫堅に、流石に無効とされてしまうのだろうかと武将達は恐る恐る孫堅を伺う。
だが、望めば叶えて下さるギリギリの線ではないかとの、期待も捨てきれない。
孫堅も、期待を込めた視線を送る武将達を見渡していた。
望まれているのならば、接吻ぐらいと思うが、懸念事項は孫策達だ。
まあ、万が一、孫策達が勝っても、額か頬にでよいか。場所が限定されているわけではないしな。
孫策以外ならば、(場所は限定されていないのに)唇へ接吻する気満々らしい孫堅は、魅惑的な笑みと共に口を開いた。
「勝者には、俺の接吻を、で良いのだな。では、皆、俺をかけてがんばってくれ。」
「と、殿〜〜vV」
歓喜に沸き上がる武将達と共に、今度こそ少数決の幕が開く。







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