口付けを交わすうちに、部屋の中はすぐに濃密な空気で満たされた。

何度も、身体を重ねたが、未だに孫策に翻弄されてばかりだ。

「伯符さま・・・・伯符さま・・・」

飛びそうになる意識を繋ぎとめるように、繰り返し孫策を呼ぶ。

孫策の頭に伸ばした手が、無意識に髪をかき乱す。

「可愛いぜ。公瑾・・・・」

囁きにと共に、孫策に抱き寄せられた。

密着した肌から伝わる熱に、思考が定まらない。

「ああっ・・・だ・・め・・・・」

止めることのできない喘ぎ声と、孫策の荒い息遣いが遠くに聞こえた。



絶頂に上り詰め、意識を飛ばした周瑜を、孫策が受け止めた。

くったりと力の抜けた体を横たえると、指で頬をなぞる。

「ごめんな。公瑾。強制的に距離を置かないと、俺はお前に干渉しすぎるのを止められねぇ。」

先日、周瑜の尾行を日課にしていることが、孫堅にバレた。

呆れた孫堅に、一人で盗賊でも狩って来いと勧められた。

自分の状態が、好ましいものでないのはわかっている。

せめて、周瑜が気づく前になんとかしろと言われて、数日間、距離を置くことにしたのだが・・・・

「はぁ〜。ちょっと離れるだけでこんなに不安になるなんてな。情けないぜ〜。」

孫策が、似合わぬため息を零す。

「でも・・・すぐに片付けて帰ってくるから、良い子で待ってろよv」

意識のない周瑜の頬に接吻すると、周瑜を抱きしめて眠りに付いた。




朦朧とした意識の中、周瑜は縋るように相手の頭を抱き寄せた。

無意識にかき乱した髪が、指に絡みつく。

掴んでも、スルリと指の間をすり抜けるはずの髪が、絡み付いて離れない。

確かめるように辿ると、滑らかな感触が相手の背中まで続いている。

「可愛いな。公瑾。」

低く落ち着いた声音で囁かれる。

明らかに孫策ではない声に混乱する。

「ああ・・・・なんで、こんな・・・・」

状況を確かめるのが怖くて、なかなか目を開けることができない。

「お前が望んだことだろう?」

「違います。私は・・・私は・・・・・」

目を開くと、妖艶な色を湛えた紫の瞳に捕らえられた。

「あっ・・・・・い・・や・・・」

ただ見つめられているだけなのに、身体が熱くなる。

指に絡まる髪を引き寄せると、サラサラと流れる髪が紫色の檻を作る。

駄目だと分かっているのに、逃れることができない。

「公瑾・・・・・」

「殿・・・駄目です・・・・」

言葉とは裏腹に、髪に絡めた指を離すことができない。

無意識に孫堅の髪を引き寄せる。

ゆっくりと孫堅が近づいてくると、近すぎてぼやける視界に、思わず目を閉じてしまった。

まるで、すすんで受け入れるような仕草。

「悪い子だな。公瑾。」

目を閉じているはずなのに、孫堅が笑みを浮かべたのが分かった。

触れそうで触れない位置まで近づいた孫堅の吐息が肌をくすぐる。

「んっ・・・・・殿・・・・」

焦らしているのか、躊躇っているのか・・・・

求めるように呼んでも、すぐに触れてはくれない。

「・・・・ごめんなさい。」

周瑜は小さく呟いた後、自分から最後の距離を詰めると、孫堅に口付けた。




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